DXにプログラミングは必要か?その必要性について考えてみる

DX(Digital Transformation)に関して時々話題に上がるのが、「プログラミングとDXとの関係性」です。DXを推進し成功させるためにはプログラミングが非常に重要な要素のひとつで、プログラミングの良し悪しがDX成功の鍵を握るといっても過言ではありません。

この記事では、DXとプログラミングの関係性やDX人材の定義について解説するとともに、DXを実現するうえで使用されることが多いプログラミング言語についてご紹介します。

現在DXに取り組んでいる、もしくはこれから取り組もうと思っている人の中で、プログラミングについてより深く知りたいときには、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

DXにプログラミングは必要か

近年注目されているDXにおいて、プログラミングは重要な役割を果たします。大きな理由は、DXを実現するためには新たなシステムの導入や刷新が必要とされるためです。営業活動支援、受発注、購買、経理、製造管理、生産計画など、さまざまな事業活動でシステムは重要な位置を占めています。

さらに、BI(Business Intelligence)やRPA(Robotic Process Automation)といった、DXと親和性の高い仕組みを実装するうえでもシステム開発は重要です。

プログラミングを自由に行えることは、すなわち自分のアイデアや新しいビジネスプロセスを具体的な形にできることにほかなりません。プログラミングスキルが必須かといわれれば必ずしもそうではないものの、DX化を主体的に進めるうえでプログラミングは重要な位置づけであるといえるでしょう。

  • BI(Business Intelligence):ビジネスの中で収集したデータをもとに経営戦略や事業活動を支援するために行う分析活動
  • RPA(Robotic Process Automation):定型的な業務をシステム化・自動化すること

DXとプログラミングの関係性

DXとプログラミングの関係性を端的に表すと、「DXは目的で、DXを形作るために必要な要素がプログラミング」だといえます。DXとは企業が向かうべき姿や目標であり、その手段がシステムです。この際、システム化を行ううえで必須となるのがプログラミングです。

よく「DXとはシステムの導入だ」と認識されがちですが、実は違います。DXは必ずしもシステムだけで達成できるものではありません。とはいうものの、DXを実現させるためにはシステムがかなり重要な要素に位置づけられます。それをシステムという形にするのがプログラミングの果たす役割です。

プログラミングを行ううえで1つの要素となるのが、「プログラミング言語」です。「プログラミング言語」は選択肢が広く、「DXを推進するためには、必ずこのプログラミング言語を使用しなければならない」といった決まりはありません。DXを推進するうえで最適な言語や手法を選択すればよく、柔軟性を持って進めることが重要です。

DX人材の定義・要素

DXに必要な人材は、プログラミング以外にもさまざまなスキルが求められます。あらためてDX人材の定義やスキルについて考えてみると、以下のように定義できます。

  • ITに関する一定の知識を持ち、ツールを活用できる
  • 最新技術について知見を持ち、システム開発に寄与できる
  • 現在の課題を抽出して、どのように解決していくのか分析できる
  • 課題にもとづき要件定義を行い、解決方法の提示ができる
  • 新しいアイデアを創出できる
  • 関係者とコミュニケーションを図り、課題解決できる

つまり、プログラミングスキルは重要なスキルである一方、DXを実現するために必要な「要件定義」「設計」といった上流工程のスキルもDX人材には求められます。

プログラミングスキルについては、基礎的な知識、応用力のほかにも可読性がよく、あとからメンテナンスしやすいようにコーディングするセンスも問われます。さらにDX化したシステムを使いこなすスキルも必要です。システムの機能や特性を知り、業務の中での効率的な使い方をマスターする必要があります。

こうしたスキルはシステムの追加機能開発やバージョンアップをする際に、エンジニアに要件をわかりやすく伝えることにもつながるため非常に重要です。

DX化で求められるプログラミング言語の例

DX化を推進するにあたり、さまざまなプログラミング言語でシステム開発が進められています。その中でも、特にシステム開発に使用されると思われるプログラミング言語は以下のとおりです。

  • Python
  • C#
  • Java
  • JavaScript
  • Ruby
  • PHP

それぞれのプログラミング言語についてご紹介します。

Python

Pythonは急速に需要が伸びているプログラミング言語のひとつです。構文がシンプルでわかりやすく、構造化データを取り扱えるという特徴があります。

Pythonは機械語学習で使用されることが多く、近年AIが急速に普及し始めたことから今後も需要の多いプログラミング言語です。ただし、手続き型言語のため処理速度は思ったほど高くないというデメリットもあります。

C#

C#は2000年にマイクロソフトから提唱され、2002年にリリースされたプログラミング言語です。C#はC++の流れをくむ部分があるものの、さまざまな点で違いがあります。そのため、C#とC++に互換性はありません。ただし、自由度の高さ、高速処理が可能という点は共通の特徴で、オブジェクト指向ながらC++のメリットを受け継いでいるといえるでしょう。

現在、C#を使用したシステムは数多くの企業で使用されており、20年以上経った現在でも主流のプログラミング言語として多くの人たちが使用し続けています。メリットが大きい言語ではあるものの、習得の難易度が比較的高い言語だといえます。

Java

Javaは1990年代にサンマイクロシステムズ(現オラクル)によって開発されたプログラミング言語で、現在数多くのシステムで採用されています。

オブジェクト指向言語でプログラムの汎用化、部品化がしやすいというメリットがあります。JVM(Java Virtual Machine)と呼ばれる、クライアントPCに展開された仮想環境上でプログラムが実行されるため、OSごとにソースコードを変える必要がない点も特徴のひとつです。

さらにプログラムをコンパイルして実行するため、手続き型言語と違い、プログラム実行時に一括処理できるというメリットもあります。

とはいうものの、クライアントPC上で実行することから、ハードウェアスペックが低すぎるとプログラムが遅くなるというデメリットもあります。

JavaScript

JavaScriptは、Webブラウザ上で動的コンテンツを提供するために使われるプログラミング言語です。おもにHTML・CSSといったフロントエンド言語とともに使用されます。JavaScriptはクライアント上で実行されるため、Webサーバーやアプリケーションサーバーのリソースに依存しない点がメリットです。

なお、Javaという言葉がついているものの、さきほどご紹介したJavaとは関係がありません。つまり、JavaとJavaScriptはまったく異なるプログラミング言語です。

Ruby

Rubyは日本生まれのプログラミング言語で、オブジェクト指向言語として多くのシステムで使われています。記述がシンプルなため習得しやすく、Ruby on Railsと呼ばれるフレームワークを使用すれば、さまざまなアプリケーションの開発を行える点がメリットです。

Rubyの将来性について一部否定的な意見が聞かれるものの、実はRubyを使用している企業や案件数は多く、人気が低下しているというより安定期にあるといえるでしょう。

PHP

PHPはWebシステムで数多く使用されるプログラミング言語です。

PHPもJavaScriptと同様に、Webシステム上で動的コンテンツを提供するためによく使われる言語で、Rubyと同様に構文がわかりやすく習得しやすいというメリットがあります。さらに、HTML内に埋め込みできる点も特徴です。PHPはサーバー上で実行されるため、Webサーバーやアプリケーションサーバーのリソースを十分に考慮しなければなりません。

これ以外にもKotlinやGo言語などプログラミング言語にはさまざまなものがあります。プログラミング言語について学ぶときには、まずは言語にこだわらずプログラミングに触れ合い、実際に体験してみることをおすすめします。

DX化とノーコードとの関係性

最近、ノーコードと呼ばれるプログラミング技法が注目を集めています。

ノーコードとはソースコードを書かずに実行できるプログラムです。ノーコードの場合、あらかじめ作成された処理を部品のように組み合わせてプログラムを作成します。ブロックのおもちゃを組み合わせて建物や乗り物を作ることを思い浮かべればイメージしやすいでしょう。

あらかじめ作られた処理を組み合わせるため習得が容易で、特にDXやリスキリングといった点でノーコードの果たす役割が注目されています。

たしかにノーコードはプログラミング言語特有の記述や難しいアルゴリズムを考える必要がないため、誰でも簡単に習得が可能で扱いやすいものであるといえます。しかしながら、ノーコードはあくまで部品であり、部品として定義されていない複雑な処理はできません。

つまり、汎用性が高く定型的な処理を自動化するのには向いていますが、イレギュラーな処理が多い場合、あるいは特殊な処理を実装したい場合、ノーコードは適していないのです。

複雑な処理や非定型的な処理を行わせたい場合は、ローコードを使う方法があります。ローコードは、ノーコードのように汎用化されていない処理も対応できます。しかし、ローコードはソースコードを書く必要があり、プログラミングスキルを求められるため、難易度が上がる点は否めません。

そのため、ノーコードを使用する場合は「DXで実現させたいことは何か」、そして「ノーコードではどこまでできるのか」こうした点を整理することが重要です。

まとめ

今回はDXにおけるプログラミングの位置づけや関係性、DXを実現するにあたり使用されることが多いプログラミング言語についてご紹介しました。

あらためて整理すると、DXを実現するためにはプログラミングが大変重要です。

DXを目的として捉えるのであればシステムが手段となり、プログラミングは手段を実現するための構成要素として重要な位置を占めています。

プログラミングができなくてもDXは推進できます。しかし、プログラミングが果たす役割は大きく、プログラミングスキルを持つ方が今後活躍の場も大きくなるといえるでしょう。

プログラミング言語はさまざまあり、DX化を進めるうえで各言語の特徴を活かして最適なプログラミング言語を選択することが重要です。

DXを実現するために必須の言語というものは存在しません。その一方で使用されやすい言語はあります。こうした点を踏まえてプログラミング言語を選択してスキルを身につけるのも、プログラミングを学ぶひとつの方法です。 DXとプログラミングに興味がある、もしくは実際にプログラミングを学習してDXに取り組みたい、取り組む状況にあるときには、ぜひプログラミングスクールや各種学習コンテンツを利用して勉強してみましょう。