IT業界の構造とは | IT業界のピラミッド構造

近年、プログラミングが注目を集め、エンジニアが職業として認知されているようになってきました。それだけIT業界に注目を集めている人が多くなっているのが現代の職業事情です。しかしながら、IT業界の構造について知っている人は多くないと思います。

「エンジニア」と聞くと「なんとなくキラキラするイメージ」を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、実態は多重下請け構造が一般的な建設業のような業界構造をしています。そのギャップに悩まされる人もいると思いますので、IT業界の構造はしっかりと理解しておいた方がよいです。

一般的なIT業界の構造

IT業界の構造は建築業界など大きなモノづくりを行う業界に似ていると感じています。その中でも大きな割合を占めているのがSIerやベンダーと呼ばれる企業になります。これらの企業は依頼を受けて、要望に沿ってオーダーメイドでシステムを開発する企業です。

依頼者と直接システム開発の契約を結ぶ企業をIT業界では「一次請け」と呼びます。お客様との契約を取り交わしシステム開発の段取りを行う企業で、SIerやベンダーと呼んでいます。NTTデータ・富士通・日立・NECといった日本を代表する企業が中心となっています。

SIerやベンダーから仕事を受注して、実際の開発業務などの下請け作業を行う実行部隊として中小企業が存在しています。こうした企業を「二次請け」「三次請け」と呼びます。実際は大手企業からの受注が収入の柱となっている企業です。

大規模なシステムを開発する場合、IT業界ではまずビッグネームである大手企業がクライアントからの依頼を受けシステム開発の契約を結び、そこに対して二次請け・三次請けへと作業を発注し、納品を受けるという多重下請け構造が一般的となっています。

SIer・ベンダー

業界研究をするとよく聞く「SIer」や「ベンダー」ですが、これらは要するに「大企業」に属します。特に大規模なシステム開発契約を結び、それを実行するには「人・もの・金」を実際に動かせる実力が必要です。そうした場合に矢面に立つのが大手企業です。

SIerやベンダーといった企業が受注した案件を、下請け企業に発注していくのが一般的な開発工程になるので、これらの企業は技術力といったスキルよりも、マネージメントスキルが求められることになります。俗にいう「プロジェクトマネージャー」と呼ばれるやつです。

モノづくりで手を動かすのではなく、人をダイナミックに使って開発工程をコントロールし、案件が滞りなく流れるように管理をすることがメインの業務になります。そのような業務に興味がある場合に目指してみるとよいでしょう。

二次請け・三次請け等

SIerなどから仕事を受注して、下請け企業として作業を行う企業のことを二次請け・三次請けと言います。場合によっては四次請けやそれ以下という場合もあります。実際の開発案件ではSIerが手を動かすことはなく、下請け企業がシステム開発を行うことが一般的です。

そのため、下請け企業は設計・実装・テストが中心業務となり、プログラミングスキルなどが求められます。IT系の専門学校や工業高校を卒業した学生や第二新卒・中途採用なども積極的に行い、未経験者を育成しながらプログラマーとして育てる企業も多いのが特徴です。

特にIT業界においては人材不足は深刻であるため、未経験であってもエンジニア・プログラマーとして育てなければ業務が回らないこともあるのです。IT企業への就職を考える場合は、このような下請け企業で経験を積んでいくのも一つのキャリアプランだと思います。

IT業界の本質:多重下請け構造

これから先、どのように業界の構造が変わっていくのかは不明ではありますが、現時点でのIT企業は「多重下請け構造」が一般的となっており、この考え方がIT業界を長らく支配しています。徐々に変わっていく可能性もありますが、すぐにガラッと変わるようなことはないと考えています。

IT業界に就職する時に考えるべきなのが「どのようなキャリアを積みたいか」という視点です。

上記で解説してきたように、IT業界は多重下請け構造になっているため、どのポジションに位置する企業に入社するかによって、キャリアアップの道筋が限定されてしまう可能性があるということです。「管理者」か「作業者」ともいえるかもしれません。

プログラミングを駆使して仕事をしたいと考えるならば、システム開発を主戦場とする企業を目指し、マネージャーとして案件の管理・顧客との対話に興味があるのであれば、大手企業を目指すべきです。個人的には中小企業から大企業を目指す険しい道が理想だと思います。

ちなみに筆者はプログラミングを使った仕事をしたかったので、中小企業に入社してプログラミングを身に付け、システムの保守・運用や新規開発に携わってきました。もし最初にSIerを選択していたのであれば、プログラミングを身に付けることなく、プロジェクトマネージャーだったかもしれません。