近年、企業活動の中でデータサイエンティストの役割が注目されています。データサイエンティストはデータを分析し、事業戦略のもととなる法則性や傾向を導き出す職業です。
現在の企業活動になくてはならない存在ともいえるでしょう。
この記事では、データサイエンティストの仕事内容、将来性、必要なスキルや資格について解説します。もし、データサイエンティストに少しでも興味を持ったときには、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
データサイエンティストとは
データサイエンティストは、さまざまな情報を分析し、法則性や傾向、事象を導き出す職種です。分析には数学や統計学を使用し、プログラミングも駆使します。
データサイエンティストの定義は幅広く、仮説立案やデータ収集、データ分析、レポーティングに限らず、データ分析基盤の構築と運用を業務に含めることもあります。このように定義があいまいな部分はありますが、見方を変えればそれだけ新しく、やりがいのある職種だといえるでしょう。
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの仕事は大きく「仮説立案」「情報収集」「データ加工」「データ分析」「分析基盤の設計と構築」の5つに分かれます。
この中で「仮説立案」「情報収集」「データ加工」「データ分析」の4つがデータサイエンティストの主な仕事です。「分析基盤の構築と設計」は、データエンジニアやBIエンジニアが主に担当し、データサイエンティストはシステム構築の一員として参画します。
あらためてデータサイエンティストの仕事内容を列挙すると、主な仕事は以下のとおりです。
- テーマや目的の設定
- 対象データの収集
- 対象データの処理
- データ分析
- レポート作成
それぞれの仕事について解説します。
テーマや目的の設定
はじめに分析目的やテーマを設定します。テーマを明確にする際には関連部署との打ち合わせを持ち、課題や問題点を整理しなければなりません。たとえば、自社製品の売り上げが思ったほど伸びない、あるいは新規サービスの展開や市場での優位性を確保したいといった課題が該当します。
こうした課題や目標をヒアリングしたうえで、分析テーマや目的の設定を行います。この際に仮説を立て、どのような切り口で分析を行うか方向性を決めることもデータサイエンティストの仕事です。
対象データの収集
次に、設定したテーマや目的にもとづき必要なデータを収集します。すでにデータレイクがある場合は必要な情報をピックアップします。データレイクは業務中に得られたあらゆるデータを蓄積するための場所です。文字どおり、データの池(レイク)を意味します。
こうした基盤が整備されていない場合は関連部署と打ち合わせを持ち、必要なデータを収集しなければなりません。この際、情報収集にはかなりの時間と手間がかかります。近年、データレイクをサービスとしたクラウドが数多く提供されています。こうしたサービスを利用するのもデータ収集を効率化するうえで重要です。
対象データの処理
データを収集したのちに、分析できるようにデータを処理します。この処理をETL(Extract、Transform、Load)といいます。
データレイクにはさまざまな形式のデータがあり、このままでは分析できません。そのため、分析できるようにデータを展開(Extract)し、フォーマットを変換(Transform)のうえ、分析ツールのデータベースにロード(Load)します。これら一連の作業は手動で行わず、ETLツールと呼ばれるソフトウェアを使用するのが一般的です。
データ分析
データ分析を行う際には、Python、Rといったプログラミング言語や、データベースの操作に必要なSQLを使用します。プログラミング言語のソースコードをはじめからコーディングすることもあれば、分析ツールを用いてソースコードを生成することもあります。
分析には数学や統計学の使用が必須です。法則性や傾向の発見には、知識以外にも経験と洞察力を求められるため、分析に慣れていなければ多くの時間を費やします。データ分析は、まさにデータサイエンティストの腕の見せどころといえるでしょう。
レポート作成
データ分析から導き出された内容をもとにレポートを作成します。レポートを作成する際にはBIツールを使用し、誰もが理解できるように可視化することが重要です。BIツールはBusiness Intelligenceツールと呼ばれ、レポーティングの際に使用されるほか、データ分析で使用されることもあります。
レポート作成時にはデータをグラフ化するだけではなく、事前に立案した仮説と分析結果の比較、新たに導き出された法則性も含めたレポートを作成します。経営陣の判断材料となる重要なレポートのため、いかに緻密でわかりやすくまとめるか、データアナリストはこの点に注力しなければなりません。
そのほかの仕事
これまでご紹介した仕事はデータサイエンティストの基本的な仕事です。そのほかにもデータサイエンティストは以下の仕事を行います。
- 分析結果が価値を生むものか分析後に検証
- 課題を解決するのに必要な論文やホワイトペーパーの研究
- プログラミング言語の習得
- 分析基盤の構築、運用
- データ分析を効果的かつ持続的に行うための体制づくり
このように、データに関連する幅広い業務がデータサイエンティストの仕事です。
データサイエンティストの需要と将来性
データサイエンティストの需要は高く、将来性が高い職種であるといえます。近年、企業活動に占めるデータの重要性が高まりつつあるためです。そのほかにもDXの推進、AIの活用によるデータ重視の傾向は広がりをみせています。
経済産業省の「DX白書2023」によると、データサイエンティストの人材が不足していると感じている企業は62.6%にものぼることがわかりました(P.330 図表5-68 データ利活用に関連する人材)。
一方、同じ「DX 白書 2023」ではデータを整備、管理する人材の確保が難しいとの回答が45.5%あります。これは企業と人材の需給に大きなギャップがあることを示しています。見方を変えればそれだけデータサイエンティストは貴重な存在だといえるでしょう(P.329 図表5-67データ整備・管理・流通の課題(複数回答))。
データサイエンティストに必要なスキルと資格
データサイエンティストに必要なスキルと資格にはさまざまなものがあります。ここで、データサイエンティストになるために必要なスキルと資格についてそれぞれ解説します。
必要なスキル
データサイエンティストに必要なスキルの中で、特に重要なものは以下の7つです。
- 統計学、数学の知識
- コミュニケーション力
- 分析力
- 洞察力
- 創造力
- 論理的思考力
- 分析基盤に対する知見
特に、課題抽出や目的を設定するうえで関係者にヒアリングしたり、ディスカッションしたりする必要があり、コミュニケーション力は大変重要です。ここで挙げたスキルは業務で経験を積む中で能動的に身につけるように意識する必要があります。
必要な資格
一方、データサイエンティストになるうえで取得しておくと有利になる資格もあります。さまざまな資格がある中で、以下の資格取得を目指すとよいでしょう。
分析力を身につける資格
- G検定
- E検定
- 統計検定
- データ解析士
- アクチュアリー資格試験
プログラミングに関する資格
- Python3 エンジニア認定データ分析試験
- Google Data Analytics Professional Certificate
データベースに関する資格
- OSS-DB技術者認定試験
- Oracle Master(Silver、Gold)
- データベーススペシャリスト試験(DS)
分析ツールに関する資格
- Microsoft Power BI Data Analyst(PL-300)
- Tableau Certified Data Analyst
上記資格は数多くのデータ分析系資格の一例です。それぞれ「分析力を身につける資格」「プログラミングに関する資格」「データベースに関する資格」「分析ツールに関する資格」に分かれます。自分のスキルやキャリアパスを考慮のうえ、資格取得の計画を立てるとよいでしょう。
なお、経済産業省ではデータサイエンティストの育成を目的とした講座を開講しています。興味のある際にはぜひご参照ください(経済産業者 Reスキル第四次産業革命スキル習得講座 講座情報)。
まとめ
今回はデータサイエンティストについて、仕事内容や将来性、必要なスキルについて解説しました。データサイエンティストは、身近にあるデータをもとに法則性や傾向、事象を発見し、事業の課題や目標と結びつきを持たせ、新しい事業戦略を提言する重要な役割を担います。
データサイエンティストの仕事は、課題の整理から始まり、仮説立案、データ収集、データ処理、分析、レポート作成と数多くあり、分析だけにとどまりません。これらの仕事をするうえで、数学やデータ分析のスキルはもちろんのこと、コミュニケーション力、論理的思考、想像力、洞察力といったスキルも求められます。
データサイエンティストになるためにはさまざまなスキルが求められる一方で、非常にやりがいのある仕事です。データサイエンティストに少しでも興味を持ったときには、ぜひこの記事を参考にしてみてください。