クラウドとは?クラウドの種類やメリット・デメリットについて解説

近年クラウドという言葉をよく耳にするようになりました。

クラウドとはインターネット経由でシステムやデータを提供するサービスで、市場規模は年々増加し続けています。クラウドは企業以外ではなじみがないと思うかもしれません。しかし、意外にも私たちは気づかぬうちにクラウドサービスを利用しています。

この記事ではクラウドとは何か、クラウドの種類、クラウドを利用するメリット・デメリットについて解説します。私たちの生活の中に溶け込みつつあるクラウドについて興味を持ったときには、ぜひこの記事を参考にして理解を深めてみてください。

クラウドとは

クラウドとは、インターネット経由で提供される情報関連サービスの総称です。

現在、クラウドは数多くのベンダーによって提供されています。有名なものではAWS(Amazon Web Service)、Azure、GCP(Google Cloud Platform)といったパブリッククラウドがあります。

クラウドによって提供されるサービスはさまざまで、インフラ基盤全体を提供する場合もあれば、データベースやストレージ、個々のアプリケーションをサービスとして提供するものまでさまざまです。

私たちが身近で利用するクラウドサービスとしてはGoogleドライブやGoogleドキュメント、Googleスプレッドシート、Office365などがあります。

近年クラウドを利用する企業は増加傾向にあり、ガートナーによると2024年のクラウド市場は約6788億ドルに達するとの予想もあります。

参考:Gartner Forecasts Worldwide Public Cloud End-User Spending to Reach $679 Billion in 2024

クラウドの歴史

そもそもクラウドという言葉が使われ始めたのは1997年、南カリフォルニア大学のラムナト・チェラッパによって提唱された「クラウドコンピューティング」という概念がきっかけです。

当時、インターネットを雲に見立て、雲のうえに各サービスが浮かんでいるイメージからクラウド(雲)と呼ばれるようになりました。

画期的なアイデアであったものの、当時はインターネットのセキュリティに対する懸念が強く、企業の情報をインターネット上のサービスに預けることに対する抵抗感などもあり、なかなか普及にまで至りませんでした。

クラウドがあらためて脚光を浴びたのは2000年代半ばです。この時期、Google、Amazonといったインターネットを主軸とした企業が数多く出現しました。2006年AmazonからAWSが提供されたことを皮切りに、2008年にはGoogleによるGCP、2010年にはMicrosoftからAzureが提供され、現在のパブリッククラウドサービスが形成されたのです。

クラウドの種類

クラウドにはさまざまな種類があり、一般艇によく知られるものには以下のサービスがあります。

  • IaaS
  • PaaS
  • SaaS

それぞれのサービスについて解説します。

IaaS

IaaSとはネットワークやサーバー、ストレージなどハードウェアレベルでインフラ基盤を提供するサービスです。別名HaaS(Hardware as a Service)と呼ばれることもあります。

利用者は自前でデータセンターを所有する必要がなく、ハードウェアの導入も不要なためコストを削減できるメリットがあります。物理的な機器を所有しないことは機器の減価償却が不要で、資産価値がなくなった際に廃棄処分を行う必要がない点もメリットです。

IaaSを利用する際は、提供された環境にOSやデータベース、ミドルウェアをインストールしてアプリケーションを実装します。IaaSの場合、OSレベルで利用者が管理するのに向いています。一方で、パッチ適用やリソースモニタリングを定常的に行わなければならず、運用オーバーヘッドが高い点がデメリットです。

PaaS

PaaSとはPlatform as a Serviceの略で、OSやデータベース、ミドルウェアなど、あらかじめ構築済みの環境をリソースとして提供するサービスです。PaaSの場合、ミドルウェアやランタイムなどシステムに必要なものが準備されているため、利用者が意識する必要はありません。アプリケーション開発やビジネスロジック構築に注力でき、運用を意識しなくて済むというメリットがあります。

一方で、OSやデータベースといった基盤部分には関与できません。そのため、「自社でコントロールしたい」、もしくは「クラウドベンダー側で未対応のミドルウェアを使用したい」といった要件に対応できず、この点がデメリットです。仮に特定のミドルウェアに備わった機能を利用したい場合はIaaSを利用するか、もしくはアーキテクチャを見直さなければなりません。

SaaS

SaaSとはSoftware as a Serviceの略で、インターネット経由でアプリケーションを提供するサービスです。先ほどご紹介したGoogleスプレッドシートやOffice365はSaaSの代表的なサービスといえるでしょう。そのほかにも、経理システムや勤怠管理システム、WebメールなどあらゆるアプリケーションがSaaSとして提供されています。

SaaSは利用者がすぐに利用でき、月額課金や年間課金といったサブスクリプションで提供されているものが多いため、コストメリットが高いというメリットがあります。もちろんハードウェアやシステム開発に費用をかける必要はありません。

SaaSは多くのメリットがある一方で、企業固有のカスタマイズがしにくく、障害が発生した場合は自社で対応できないというデメリットがあります。

今回ご紹介したサービス以外にも、FWaaS(FW as a Service)やDaaS(Desktop as a Service)などさまざまなクラウドサービスが存在します。このように、いかなるサービスもインターネット経由で提供できるのがクラウドの特徴ともいえるでしょう。

クラウドを利用するメリット

クラウドを利用するメリットは多く、たとえば以下のようなメリットがあります。

  • 機器調達や運用にかかるコストを削減できる
  • 利用したいときにすぐに使い始められる
  • スケールアップ・スケールアウトしやすく拡張性が高い
  • 規模を縮小したいときも柔軟に対応できる
  • さまざまなサービスを組み合わせられる

いずれのメリットにも共通していえることは、利用者がシステムにかける費用や手間が一切かからない点です。通常、システムを使いたい場合は要件定義から始まり、設計、機器の調達、開発を行わなければなりません。加えて、リリースしたシステムは保守・運用が必要で、運用コストは固定費としてかなりの負担になるケースも数多く見られます。

しかし、クラウドの出現により、こうした手間が大幅に削減され、拡張や縮小も自在に行えるようになりました。さらに、クラウドサービス提供者により最新のサービスがリリースされ続けることによって、便利な機能がすぐに利用できる点も大きなメリットであるといえます。

クラウドを利用するデメリット

クラウドにはデメリットもあります。たとえば以下のようなデメリットです。

  • 自社のセキュリティポリシーや方針に合わないことがある
  • 機密性が極めて高いデータを外部へ預けることに不安がある
  • 既存システムとのギャップが大きくクラウドで実現できない
  • クラウドベンダーで障害が発生した場合に影響を受ける
  • クラウドベンダーの倒産リスクがある

このように、自社で完全にコントロールしたいという要件、セキュリティに関する懸念がおもなデメリットとして挙げられます。この点はクラウドを利用するうえでトレードオフとなる部分で、何を優先順位とするか、リスクはどの程度許容できるのかによって、必ずしもデメリットにはならない可能性もあります。

ただし、クラウドは何もかもが完璧で万能なわけではありません。クラウドを利用する場合には、今回挙げたような点を意識して計画を立て、実際に利用することが重要です。

まとめ

今回はクラウドについて、その歴史や代表的なクラウドの提供形態、メリット・デメリットについて解説しました。

クラウドは1997年に提唱されたクラウドコンピューティングの概念を基礎として、2000年代半ばから急速に利用者が伸び続けています。特にAWSやAzure、GCPといったパブリッククラウドの市場規模が急速に拡大し、この流れは今後も続くでしょう。

クラウドにはIaaS、PaaS、SaaSと呼ばれる代表的なサービス提供形態があり、利用者が機器調達を気にせず気軽に使い始められる点が大きなメリットです。

一方で、セキュリティや自社のコントロールに懸念がある場合は、クラウド以外の方法でシステムを構築して維持管理をしなければなりません。そのため、どのようにクラウドを利用するのか十分に考慮することが重要です。 とはいうものの、クラウドサービスはさまざまな形態で拡大し続けているため、今後もますます注目され続けることが予想されます。